FDY工房家具展終了にあたり思うこと

FDY工房家具展無事終了しました。
今回も多くの方々にFDY製品に対しての高い評価をいただきましたが、価格が高い、ということでお買い求めいただくことに躊躇される方が多かったのは今までと変わりはありませんでした。私も数日展示場に立ちましたが、実際に作る側に対して尋ねられるのは「制作日数はどのくらいかかるのですか」というご質問が多く聞かれました。おそらく手作り家具で高級な家具だからそれ相当の日数がかかるのが当たり前と思われているようですが、まって下さい!工房作家が作るような一品制作とは違いますので、何か月もかかることはありません。だからと言って職人の価値は一般的に考えられているような労働価値とも異なり、製作日数で計られるものではありません。そこが工房作家の作品と違うところでもあり、工業生産品との違いでもあります。ようは、時間や日数で計るのではなく、職人の代価は何年もかけて修練をかさねて獲得してきた技術と技量によって計られるということをご理解いただきたいものです。ご注文に応じて制作に入りますが、部品がそろっている場合とそうでない場合ではずいぶん違いが出てしまいます。材料調達、木材の購入には特に手間がかかってしまうことがあります。制作だけであれば、木材が完備して、部品がそろっていると1週間もすれば大方の製品は完成しますが塗装にはどうしても3日は必要ですので最低10日は必要でしょう。しかし部品の加工から入るとすると2週間、木材を探すとなると何か月もかかる場合が生じます。乾燥が必要な場合は2、3年かかることもあります。工業生産品は一日に何百何千と生産できますので値段が違ってくるのが当然ということになります。どうかその辺をご理解いただきますようお願いしたいものです。お買い求めいただくお客様が安定して確実になりますと、前もって揃える材料や部品が安定しますので、製作日数は確実に10日あれば完成させる体制を整えることができます。それが工房経営が成り立つ最低条件ですが、そこに至るまでにはまだまだ遠い先のこととなります。ここまではあくまで工房直売の話で、工房価格でお渡しできますが、今回、お盆の期間で客足が伸びなかったこともありますが、工房販売の限界を感じることになりました。安定した購入者を得るにはどうしても第三者の手助けが必要となっております。そうなるためには私どもの製品価値を認めていただく必要があります。そこに販売価格をきめるバイヤーが必要となってきます。そうしますと以前にお話しましたように倍以上の価格になってしまうということをご理解いただけましたら決して現在の価格が高すぎるものではないことをご理解いただけると思います。自分から言うのはおこがましいのですがFDY家具の本当の価値がわかっていただいたお方には即断でご予約をいただく場合もあるということも事実であります。今の時代、こういった価値のあるものを是非皆様に知っていただきたいし、後世に引き継いでいきたいと日夜努力をしております。こういう価値を受け継ぐ人材を育成していくことを無形文化財の伝承と言うのではないかと自負しております。正直言って私には職人としての自分と教授という立場の自分が同居していまして、どちらかと言うと職人としての自分の方が先にありますので、あまり自分のものを自慢するのはおこがましいと思う考えが優先してしまうのですが、ここで教授という立場で述べさせていただくと今日まで、日本にFDY工房のような伝統的な製作法を堅持している工房や企業は私が見てきたかぎりの範囲にかぎってのことですが、数少ないかぎられたものではないかと思っております。長い間、デザイン教育の現場に立ち、デザインの理想であります大衆のための家具デザインの普及という立場で見ますと安価で丈夫な製品は、現代に至っては大方その目的を果たしたのではないかと思われるほどです。しかしながら生産において工業生産化が進み販売利益の追求に偏りすぎたがために、職人の手作りなどの伝統的なものがなおざりになり、価格競争のあげく気が付けば伝統という従来のものからかけ離れたものへと変質してしまったというのが現実ではないでしょうか?近頃、新しい先進的なデザインで知られるメーカーさえもが伝統、伝統と叫ぶ機会が多くなりました。しかしそれは逆に伝統を見失なった反動ではないかと思われても仕方がないのでは?一度失ってしまったものを取り戻すのはそう簡単ではありません。我々デザイナーがめざした格好よくクオリティーの高い新規なデザインの家具は結局廉価な工業生産品に行き着くのではないかとみまがうほどです。さすがになんとかしなければ、という先進的な考えの方々が現れつつあります。先進的なデザインは機械化された工業生産システムからしか生まれませんが、伝統的なスタイルは職人による工房システムの中からしか生まれないのでは?FDY工房の歩みが参考になるようなことになれるとしたら、この上ない幸せなことですが、はたして?

2015,08.31



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